9月。米どころでは秋の収穫の支度がはじまります。
特に目を引くのが、杉の木同士を結ぶように、横に張られた標識ロープ※や、鉄パイプ・丈のような筒状の棒が何段にもわたって平行に組まれた構築物。筋肉自慢のお父さんたちが、一斉に懸垂でも始めるのでしょうか。
※標識ロープ:ポリエチレン素材の頑丈で切れにくい縄。黄色と黒の紐が縄状に結われていることからトラロープともいう。
これらは全て、「稲架場(はざば)」と言われるものです。
収穫した稲穂を干して、太陽の力で自然乾燥させるやり方を「稲架(はざ)かけ」といいます。
約2週間ほどかけてゆっくり乾燥させることで、お米自体に無理なく水分が抜けていくため、その後の籾摺りや精米の際に胴割れ(米粒の内部に亀裂が生まれること)や砕米が出にくくなるそうです。
今はコンバインでそのまま脱穀(お米の粒を穂から取り離すこと)までしてしまうので、昔ほど稲架かけをする人は多くありません。今回は蒲生の棚田と儀明の棚田を耕作する、株式会社トロノキファームの稲架場づくりをご一緒させて頂きました。
●トラロープがほどけない「ロック」する結び方がすごい
トロノキファームの稲架場は、杉の木同士を標識ロープで結ぶやり方。まず、端となる杉の木を選びます。
何事も始点と終点が大事。始点となる太い杉の木に結ぶロープは、絶対にほどけてはいけません。
ここで私のような素人だと、「何重にも固結びをしておけば安心じゃないか?」と思ってしまいますが、
結び目を多くしたところで、場合によっては緩んだり、ほどけてしまうのが標識ロープの難しいところ。
トロノキファーム役員の柳さんが、シンプルながら緩みにくい、頑丈な結び方を教えてくれました。
1.縄を1回ひと結びする
2.紐の先端側(短い方)の縄を強く引く(ここでロックがかかる)
3.その状態をキープして、先端側で作った輪っかをひと結びの結び目に入れる
というシンプルなもの。この2がポイントで、長い方を引いたまま3.に進んでも、紐を強く引くと緩んでしまうから不思議。
筆者も何度か失敗して、ようやくコツを掴みました。根気強く教えてくれた柳さん、ありがとうございました!
●杉の木の端々からみて、奥に引っ込んでいる木にロープを回して経由させていく
これは確かにという部分ですが、端と端だけ結んでも、どうしても中央はたわんでしまいます。
そこで、途中に何本か杉の木を経由させて、できるだけピンと張った状態がキープされるようにします。
そのとき、杉の木の太さも一定でなく、真横一文字に植えられていない場合も多いため、
・端と端を結んだラインから奥にある木は標識ロープを一周回して通す
・端と端を結んだラインから手前にある木はロープは張るだけ
という方法で、稲の重みにも耐えられる稲架場をつくっていきます。
ここで、筆者の失敗談をひとつ。
昨年、筆者の移住元の埼玉から通いつつ、ほんの小さな(0.05反ほど)田んぼをお借りして、ほんの少し、稲が収穫できたのです。
それを干そうとなったときに、量も少なかったためコメリでカラーコーンと2mほどのコーンバー(これも思えば虎柄だった)を購入して、稲架場代わりにしようとしたのです。
実際にかけてみると、びっくり、稲の重みで中央はぐにゃりと曲がってしまい、稲穂が地面に接地してしまい、結局木の棒をお借りして稲架場を組み直しました。
そう、【稲穂は意外にも重たい】ということを知ったのです。
●縦木を通し、紐で固定していく
さて、杉の木をロープで結んでいったわけですが、それでも多少、間の間隔が空いてしまいます。
そこで、竹等の縦木を通して、それぞれ横に張ったロープと紐で固定します。
今回は、よく荷物紐としても使われる、手締め用PPバンドで固定していきました。
これで杉の木を用いた稲架場づくりは完成!
まだまだ暑さが続く松代。今年は稲刈り適期が2週間早いと言われています。今年のお米の出来はいかに。引き続き、棚田の様子をレポートしてまいります。