前回記事①でご紹介した 松代蓬平地区を中心に今も生み出され続けている「マユビト」について少しおさらいしておくと・・・
マユビトとは”越後妻有・蓬平の里山にすんでいる地霊”として、大地の芸術祭の作品制作に携わった「夜間工房」のデザイナー 加古雅彦氏が考案し、2009年から松代蓬平(よもぎひら)地区を中心に地域住民の手によって制作されている繭人形のこと。
こちらは、ひとつひとつ、手作業によって
①繭選び(キャラクターごとに)
②蛹を取り出す
③頭になる繭と体になる繭と足になる綿棒を付ける
④パーツを貼る
⑤彩色
⑥仕上げ剤の塗布
⑦台座に付ける
⑧パッケージ作業
⑨納品
が行われているそうです・・!
実際にはひとつひとつの個体を一気に仕上げていくのではなく、ある程度まとまった数を工程別に作り分けていくのだそう。
彩色も2~5回に分けて行われることもあり、根気と集中力を必要とする作業が続きます。
それにしてもひとつひとつそのパーツの細かいことといったら・・・!
しかもこのパーツ、特殊な和紙に印刷されていて、切り出し作業が大変!ただ、和紙の風合いだからこそ、繭の素材とうまくマッチしていて、ぬくもりのある仕上がりになっています。
またマユビトのすごいところは なんといっても「蚕を育て、繭からつくる」という、こだわりです。
「材料になる繭を買って、そこから作り始めるのではないんですね・・・!」
蚕は野生のクワコを数千年かけて家畜化したものですが、生き物ですから思い通りにするには限界があります
卵から、幼虫を孵し、その段階に合わせた給餌(桑の葉)や環境の設定が必要になります。
(詳しくはこちらのサイトを参照してみました。農研機構「カイコのひみつ」)
伺った時には蚕はすでにおらず、繭となったものだけを見せていただきました。
すべてが商品にできるような美しい形になるとは限らず、どうしても形が歪んでしまったり、そもそもすべての卵が繭になるわけではなかったりと自然物であるからこその難しさもあるのだと知りました。
養蚕は昔から農家さんの副収入源であり、現代においても、養蚕専門の業者でなければ、基本は仕事、農作業の合間に日々行われています。
自然・生き物相手は、人間の思う通りにというわけにはいかない。
「それでも、蚕から育てると、やっぱり愛着がわくというか…かわいいんだよねぇ。」
と作り手の方は笑顔で話してくれました。
「それに、やっぱりここ(蓬平)で育てた繭だからこそ、意味があるということもあるし。それがマユビトの始まりの頃からの大切なことだから。」
そこには、記事①でふれたように、
このマユビトが、地域に眠る養蚕の文化と記憶を再びよびおこす「養蚕プロジェクト」の中から派生してできたプロジェクトであるということ、マユビトの原点として「地域をあげて蚕を育て、そこから繭をとる」ことが今も大切にされているという証でもあります。
そういった魅力が、マユビトには滲み出ているからこそ、ひとつひとつに”魂”を感じるような気がするのか・・・と腑に落ちた気がします。
とはいえ、養蚕プロジェクトに関わってきた方々も高齢化により、なかなか養蚕を続けられなくなってきている現状があるそう。
マユビトづくりに携わっているのも松代地域全体で4名しかいません。(2024.9月時点)
このままでは、貴重な養蚕の記憶をいまに伝えるためのものづくりが途絶える日もそう遠くなく来てしまうかも…
そのために、マユビトづくりに携われる人を増やしていきたい、マユビトのことを伝えたいと、忙しい中取材に快く応じて下さったのでした。
つくりてさんのご縁で、今年は、地元の保育園や小学校で、蚕をこどもたちが実際に育てて、繭を加工してみるという機会も設けられたそうです。子ども達にとってはなかなか経験できることではないですし、きっと記憶に残ることでしょう。
地元のひとつの取り組みとして今後も何かしらの形で繋がっていってくれると嬉しいと感じます。
マユビトは、実はあまり地元住民の方に広く知られているわけではありません。
でも、たしかにここ”まつだい”の土地から生まれだしているものなんです。
だからこそ、マユビトのつくりびとを増やしていくことに何かしら今後も携われたらいいなと感じています。
この記事を読んで気になる!と思った方は、ぜひマユビトについて調べてみて下さると幸いです。
実際にマユビトは作れないという方も、蚕を育てるために必要な桑の葉を提供する形でサポートすることも可能です。
ぜひ、今後もマユビトをつくる工程を実体験したレポートや、今回深堀しきれなかった、マユビトのつくりびとさんの、マユビトづくりにかける想いも取材して記事にしていきたいと思います!
乞うご期待です!
マユビト 公式Facebookページ
「原色マユビト図鑑」↓マユビトをイラストで紹介。各キャラクターの設定のほか種族ごとの分類、性格などを詳しく見ることができる。
https://www.facebook.com/media/set?vanity=413860051958877&set=a.476457125699169&locale=ja_JP
越後妻有大地の芸術祭▼
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